18、霜降(そうこう)
霜降とは、二十四節気の第18番目で10月節、定気法では太陽黄経が210度のときで(黄道十二宮では天蠍宮の原点に相当)10月23日・24日ごろのことです。
霜降は、霜が降りる頃と言う意味、秋から冬に向けて冷え込みが強まり、霜が降りはじめる時期です。
この時期には、気温も下がり、早朝には、空気中の水分が凍り、草木の表面、地面につくと霜となります。ひとつ前の節気である、寒露では、寒くてもまだ、凍りつきはしていない、露の状態ですが、この時期になると、凍って霜となります。露が冷気によって霜となって降り始めるころで、暦便覧では「露が陰気に結ばれて霜となりて降るゆゑ也」と説明しています。楓や蔦が紅葉し始めるころでもあり、この日から立冬までの間に吹く北風を木枯らしと呼びます。
この霜降の時期に詠まれた、有名な句に、「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」というものがあります、この句は俳人で歌人の正岡子規が明治時代に詠んだ一句で、子規は1895(明治28)年10月26日に奈良へと旅立ち、その旅先で、この句を詠んだといわれます。
八入(やしお)の雨
一雨ごとに、木々の葉の色を濃く染めていく雨のことを「八入(やしお)の雨」といいます。「感慨も一入(ひとしお)である」とか「今年の夏の暑さは一入だった」ということがありますが、「ひときわ」とか「いっそう」といった意味でもある、この「一入」とは、布を染めるとき、染料に一回浸すことで、これを何回も浸すことを八入(やしお)といいます、「八」とは多いこと意味しているように、山々や公園などを美しく染める紅葉に至るまでには、何度も八入の雨が降って染められたのでしょう
紅葉狩り
紅葉を鑑賞する習慣は、奈良時代から始まったといわれていて、「万葉集」にも登場しています。
平安時代になると、貴族の間で広まって、紅葉を愛でながら宴を開いていました、それらの様子は「源氏物語」にも描かれています。江戸時代になると庶民にも浸透していき、一般も楽しむ季節の行事として定着していきました。
紅葉を鑑賞するのに「紅葉狩り」というのは、獣を捕まえるという狩りことではなく、花や草木を探し求めるという意味があります、他にも、果物を採る場合にも「いちご狩り」や「ぶどう狩り」のように使われています、採集するわけでもなく、紅葉を鑑賞するのに「紅葉狩り」というのは、狩猟を好まない貴族が自然を鑑賞するすることを狩りに例えたといわれています。また、元々は紅葉を集めて楽しんでいたのが、眺めることに変わっていったという説もあります。
11月15日、七五三
七五三は、数え年で、男の子は5歳(地方によっては3歳も)、女の子は3歳と7歳に、神社・氏神に参拝して、その年まで無事成長したことを感謝し、これから将来の幸福と長寿をお祈りする行事です。古くは宮中や公家の行事でしたが、江戸時代に入ると一般的に広く行われるようになりました。
3歳の髪置き(かみおき)の儀、5歳の袴着(はかまぎ)の儀、7歳の帯解き(おびとき)の儀の儀式が由来となっています。 昔は子供の死亡率が非常に高かったため、このような節目に成長を祝い、子供の長寿と幸福を祈願したのです。
七五三参りの日取りが、11月15日になったのは、江戸時代、五代将軍徳川綱吉が、子供である徳松の祝いを天和元年11月15日に行ったことからとされています。
また、旧歴のこの日が二十八宿の鬼宿日(きしゅくにち)にあたり、婚礼以外は何事の祝い事にも吉とされていた事に由来して、また、11月は秋の実りを神に感謝する月なので、その月の満月にあたる15日に、氏神に収穫の感謝すると共に子供の成長の感謝・祈願をしたものと思われます。七・五・三はいずれも陽数で、縁起の良い数字とされています。
※髪置き(かみおき)の儀
もう赤ん坊ではないという意味で「櫛置き」ともいいます。
平安時代は、男女とも3歳までは髪を剃り、3歳の誕生日になって初めて髪を伸ばす風習がありました。男女を問わず、乳児の頃に髪を剃ることで、やがて健やかな髪が生えてくると信じられていました。
髪置きの儀は、綿白髪を頭にかぶせ頂に白粉をつけて、櫛で左右にすいて祝うという儀式で、髪が白くなるまで長生きするようにという願いが込められています。
※袴着(はかまぎ)の儀
5歳になった男子はその年の11月15日に初めて袴をはいて、碁盤の上に吉方向を向いて立たせました。江戸時代からは、男子だけの儀式となりました。
※帯解き(おびとき)の儀
女子は7歳になると、それまでの紐付きの着物にかわり、本裁ちの着物を着て、丸帯を締めました。これを紐解き・帯解きなどといいます。この日からは一人で帯を結べるようになり、一人前の人間として社会に認めらるけじめの儀式です。
酉の市(とりのいち)
霜降の季節には、日本各地の鷲(おおとり)神社で「酉の市(とりのいち)」が催されます。これは、毎年11月の酉(とり)の日に行われる開運招福・商売繁盛を願う大きな縁日です。様々な大きさの熊手(くまで)が縁起物とされます。酉の日は12日ごとに巡ってくるため、11月に3度行われる年も。その場合1度目を「一の酉」、2度目を「二の酉」、3度目を「三の酉」と呼び、「一の酉」が霜降に含まれます。
七十二候
初候 霜始降 しもはじめてふる 10月23日〜10月27日頃
氷の結晶である、霜がはじめて降りる頃です。昔は、朝に外を見たとき、庭や道沿いが霜で真っ白になっていることから、雨や雪のように空から降ってくると思われていました。そのため、霜は降るといいます。霜は、夜から朝にかけて急激に気温が下がるとき、空気中の水蒸気が冷えて氷の結晶になったもの。実際は空から降りてくるわけではありません
次候 霎時施 こさめときどきふる 10月28日〜11月1日頃
ぱらぱらと通り雨のように雨が降りはじめる頃です。晴れていたのに、急に雨が降り、傘をさす間もなく青空顔を出す、初時雨は、人々や動物たちが冬支度をはじめる合図だともいわれています。不意に訪れるものや、しきりに続くものを時雨に例え、「木の葉時雨」「蝉時雨」「空の時雨 (涙の意)」など、美しい言葉も生まれています。
末候 楓蔦黄 もみじつたきばむ 11月2日〜11月6日頃
もみじや蔦が色づいてくる頃です。葉が赤色に変わることを「紅葉」と呼び、銀杏のように黄色に変わることは「黄葉」と呼びます。また、秋の山が紅葉することを「山粧う(よそおう)」といいます。秋が深まるごとに色を重ね、まもなく散っていく紅葉は、移ろいゆく季節を愛でる日本人にとって格別なものであり、春の桜と同じくらい待ちわびられる存在でした。紅葉狩りの歴史は古く、平安の頃から始まったそうです。ちなみに、紅葉 (もみじ) の語源は「揉みいず」で、色が揉み出されるという意味です。