19、立冬
立冬は、二十四節気の第19番目で十月節、定気法では太陽黄経が225度のときで11月7日頃のことです。
秋も極まってきて、鮮やかだった木々の葉も、だんだんと色あせて冬枯れの様子が目立ち、日が暮れるのも段々と早まっていきます、いよいよ冬の訪れを感じられる頃、木枯らしが吹き、北国からは初雪の便りも届くようになります。
立冬、「冬立つ」というその文字通り、暦の上ではこの日から冬の始まりとされています。。
江戸時代の暦の解説書でもある暦便覧には、「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」と説明しています、とはいえ、まだ、秋の極み、本格的な冬の寒さが訪れるにはまだ早く、実際には、多くの地域ではまだまだ秋らしい気配が残っており、これから、紅葉の見時でもあります。
ぽかぽかといいお天気が目に浮かんでくる小春日和(こはるびより)
なんとなく冬の終わりに使いそうな言葉ですが、実は小春日和は「晩秋から冬にかけての温かく穏やかな日」に使う言葉です。小春とは旧暦10月のことで、今でいうところの11月から12月初旬を指します。つまり、立冬のころの気候のいい日を「小春日和」と呼ぶわけです。
11月の下旬には冬らしい寒さも訪れますが、上旬はまだ、暖かい陽気の日もあります、そんな日のことを「小春日和」と言います、春の字が含まれているので春に使われる言葉だと思われがちですが
「小春」は冬の季語で、この季節、寒い日が続く中、時おり訪れるつかの間の温かさのことをそう呼ぶので
二十四節気 二至二分四立
太陰太陽暦(旧暦)においては、月日は月の朔望をもって数えられます、そのため暦上の日と実際の季節にはずれが生じます、そこで一年を24等分した二四節気を用い正しい季節を数えました。二十四節気とは、 二至(夏至、冬至)、二分(春分、秋分)、そしてその中間点を立春、立花、立秋、立冬としてこれを、四立として春夏秋冬の始めとしました、これらのことから、立春や立冬など、暦の上では、春とか冬といわれるようになりました。
二至二分と四立とを合わせて八節と言い、この八節を各三分すると、約15日となり、これが二十四節気となったのです。
亥の子
亥の子とは、亥の月(旧暦の10月)の最初の亥の日のことを言います、
「亥の子」の由来は、古代中国で旧暦10月亥の日、亥の刻(午後9時~11時)に穀類を混ぜた餅を食べるという風習があり、この餅を食べると、無病息災に暮らせるという信仰があり、これらの風習が、古来日本に伝わって宮中行事に取り入れられたと言われています、また、景行天皇が九州の土蜘蛛族を滅ぼした際に、椿の槌で地面を打ったことに由来するという説もありますが、これらの宮中行事が、貴族や武士の間で広まっていき、しだいに民間の行事として定着しました。
亥の子は主に西日本で見られる行事で、「亥の子餅」を食べて、無病息災や家内安全、多産の猪にあやかり子孫繁栄を祈ります、また、農村地方では、刈入れが終わる時期とも重なって、収穫の祝いを神に感謝する行事でもあります。
亥の子は、地方によって「亥の子祭り」や「亥の子の祝い」あるいは「玄著(げんちょ)」とも呼ばれています。京都市上京区にある護王神社は別名、いのしし神社と呼ばれ、毎年11月に斎行される、亥子祭では、平安絵巻さながらの儀式が再現されます
亥の子餅を食べるという風習以外に「亥の子突き」を行う地方もあります、これは、子どもらが、稲のわらで作った「亥の子槌」や、石に縄を付けた「石亥の子」と呼ばれるもので地面を叩きながら、各家々を回わり、亥の子餅やお菓子、お小遣いなどををもらい歩くという行事です。
地面を叩く行為は、大地の精霊に活気を与えるためだと言われていますが、これには、田の神の性質に由来する古い言い伝えがあります。田の神は山の神と同一神であると言われていて毎年、2月の亥の日に山から降りてきて、田にとどまって、収穫が終わると、亥の月の亥の日に山に帰っていくと信じられていました。つまり、亥の子祭りの時期にはもう田んぼには神様はおられない、その空いた時期に、悪神や邪神が入り込まないように、祓い清めるため地面を打つ行為をおこなうのです。
地面を叩くというのは、相撲の四股を踏むことと同じで、大地を踏みしめることにより、邪神を祓う意味が込められています。また、一説には、地面を叩き、田畑を荒らす害獣のモグラ退治が目的だともいわれています。
「亥の日」には、炬燵(こたつ)開きや、炉開きが行われる風習のある地方もあります、これらの風習は中国の陰陽五行説の相剋からきていて、「亥」は五行では水性で、「火」を剋す、「水」にあたります、つまり水が火を消す、火災から逃れるという縁起担ぎが大きく起因しています。
また、茶の湯の世界に於いても、「亥の日」を炉開きの日としていて、お茶席の菓子として「亥の子餅」を用います。
七十二候
初候「山茶始開 (つばきはじめてひらく)」 11/7~11/11頃
山茶花 (さざんか) の花が咲き始める頃です。
この山茶 (つばき) とは、椿ではなく、ツバキ科の「山茶花」のことを指しています。
山茶花という漢字は「山に生え花を咲かせる茶の木」を表し、葉の部分をお茶として飲んでいたことに由来しています。咲く花が少ない季節に、人知れず咲いて散っていく山茶花は殺風景な冬枯れの景色を可憐に彩り、寺院や茶室の庭木としても好まれます。花言葉は「ひたむきな愛、謙遜、理想の恋」です。
次候「地始凍 (ちはじめてこおる)」 11/12~11/16頃
夜になると冷え込みがいっそう厳しく、冬の訪れが肌で感じられる季節です。朝には霜が降りて、霜柱が見られることもあります。日ごとに寒さが増して季節は本格的な冬を迎えます。霜の降りるような夜、地中の水分が凍ってできる氷の柱が「霜柱」です。湿気の多い柔軟な土質に生じます。霜柱ができるにはさらに条件があり、地面近くの気温が0℃、下の地中の温度が0℃以上、土壌の含水率が30%以上ある場合に発生しやすいそうです。
そして、その成長点は柱の上部ではなく下部にあり、押し出されるように伸びていきます。
末候「金盞香 (きんせんかさく)」 11/17~11/21頃
水仙の花が咲き、芳しい香りを放つ頃です。ここでいう「きんせんか」とは、春に咲くキク科の金盞花ではなくて水仙のことをさしています。金盞は黄金の杯 のことで、6枚の花びらの真ん中に黄色い冠のような副花冠をもつ水仙の異名です。水仙の開花時期は11月半ばから3月頃で、まだ雪の残る野山の斜面などに、白や黄色などの可憐な花を咲かせることから別名「雪中花」とも、冬の厳しい寒さの中でもすっと立ち上がって咲く姿は、楚々とした美しさがあります。