15、白露
白露(はくろ)とは、二十四節気の15番目で八月節、現在広まっている定気法では太陽黄経が165度のときで9月8日ごろのことです。
大気が冷え始めて霧が降りて、白く輝くように見える頃と言う意味、夜の気温が下がり空気中の水蒸気が冷やされて水滴となり、草花、葉っぱなどに付きます、それが、露(朝露)です。日中はまだまだ、残暑が残りますが、朝晩には冷えるようになり、朝露が降り始める時期です。
白露は、秋の訪れをいつくしむように、早朝の光に、キラキラと輝いている露の美しさを表していて、「暦便覧」には、「陰気やうやく重りて、露凝りて白色となれば也」と書かれています。
また、中国伝統の五行説によると、秋の色は白とされていて、秋の事を、白秋とも言います。
余談ですが同名の詩人でもある北原白秋が活躍した時代のことを白露時代と呼びます。
そして、露の美しさは、花や宝石に例えられる事も多く、「露華」「露珠」「玉露」などがあります。また、「月の雫」という言葉は、露の異称です、たくさんの露が草木から滴り落ちる様子を表す「露時雨」ということばもあります
重陽の節句
9月9日は五節句の一つ「重陽の節句」です、陽が重なると書いて、「ちょうよう」と読まれています、他の節句の、人日の節句(1月7日)・上巳の節句(3月3日)・端午の節句(5月5日)・七夕の節句(7月7日)は、広く親しまれていますが、なぜか重陽の節句はあまり浸透していません。
中国では奇数のことを陽数といい、縁起がよいとされてきました、そのなかでも最も大きな陽数である「9」が重なる9月9日を「重陽の節句」と制定して、無病息災、子孫繁栄などを願い、祝いの宴を開いたことが起源とされています。
ただ、その一方で、陽数が重なると災いが起こりやすく、不吉だと、考えられたことで、災いなどが
起きないように、9月9日には邪気を払う風習が根づいたともいわれています。これらの風習が平安時代初期に、ほかの五節句とともに日本に伝わり、平安貴族を中心に季節の移ろいを知らせる節句として広まっていきました。
重陽の節句の旧暦9月9日は、新暦では10月中旬ごろで、菊の花が咲き、見頃を迎える時期になります。菊は邪気を払う力をもつ霊草と信じられていたこともあり菊の花を観賞したり、菊の花を漬け込んだ酒を飲んで、無病息災や不老長寿を願ったとされる。
また菊に綿を被せて一晩おき、そこに溜まった夜露で肌を拭うと若さを保つことができるとの言い伝えもあり、この「着せ綿」は、この時期の和菓子の題材としても知られており、季節感を大切にする茶席で好まれています。
これらのように、重陽の節句は季節の菊を多く用いることから「菊の節句」とも呼ばれて、江戸時代になるとは庶民の間で広く親しまれる季節の行事となっていきました。
後の雛(のちのひな)
「後の雛」は、江戸時代に庶民の間から始まった行事とされ、3月3日の上巳の節句で飾った雛人形を片付けた後、9月9日の重陽の節句に再び飾ることで長寿を願うという意味を持つ風習です、桃の節句は女の子の成長や幸福を願う節句にですが、菊の節句である重陽の節句は大人の女性の健康や長寿を願う節句の意味があり、「大人のひな祭り」とも呼ばれています。また後の雛には、もう一つの意味もあり、高価な雛人形を1年間しまい続けたままにすると、害虫がついたり傷んだりするので、9月に再び飾り風を通すことで、長持ちさせることができると考えられ、江戸時代から伝わる、「もの」を大切にする思いから生まれた行事でもあります。
秋の収穫を祝う九州地方の「くんち」
重陽の節句は秋の節句の意味合いもあり、作物の収穫祭として形を変えながら全国各地で受け継がれています。なかでも、九州地方の「くんち」がよく名が知られていてます。くんちとは九州の方言で9日を意味していて、収穫を感謝して行われる秋祭りのことを指しています。「長崎くんち」、「唐津くんち」、「博多おくんち」は「日本三大くんち」と呼ばれていて、そのなかでも「長崎くんち」は、諏訪神社の礼祭で400年の歴史があり、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。くんちの期間には九州の各地で勇ましい掛け声で、華やかな神輿を担ぐ勇ましい人々の姿や、龍踊りを見ることができます。
中秋の名月
夏が終わり、秋めいてくる9月の恒例行事には、お月見があります。お月見といえば、十五夜とも呼ばれる「中秋の名月」ですが、これは旧暦8月15日に見える月を意味します。秋は、空が澄みわたり月が明るく最も、美しいとされていて、平安時代から十五夜には観月の宴が開催されてきました、当時は貴族だけの習慣で、庭に池を掘り、月影を映して楽しみました、江戸時代になると、宴と秋の収穫を感謝する祭事が合わさり、一般民衆に広まっていき、現在の、お月見の形が出来上がりました。
中秋の名月は「芋名月」ともよばれます。これは中秋の名月にサトイモを供えたことに由来しています。サトイモのほかには、団子や栗、ススキなどもいっしょに供えお月見を楽しみます。
七十二候
初候 9/7~9/11頃 草露白 (くさのつゆしろし)
野の草に降りた朝露が白く光って見える頃となりました。露は、夏から秋への季節の変わり目など、朝晩の気温が下がる日によく見られ、秋の季語にもなっています。
次候 9/12~9/16頃 鶺鴒鳴 (せきれいなく)
セキレイが鳴き始める頃となりました。鈴のように高い声を放ち、秋の空をさわやかに飛んでいくセキレイ。水辺を好む鳥ですが、民家の軒下などにも巣を作るので、馴染みのあるその鳴き声だけでも聞いたことがある人は多いはず。尾を上下に振り、地面を叩くように歩く様子から、石叩きの異名もあります。
また、日本神話の伊弉諾 (イザナギ) と伊弉冉 (イザナミ) に男女の交わりを教えたことから、「恋教え鳥」とも呼ばれます。こうした伝説から、セキレイは古来より夫婦円満の御神鳥として崇められ、結婚の儀にも関係が深く、皇室の成婚時には新床にセキレイの飾りが置かれてきたそうです。
末候 9/17~9/21頃 玄鳥去 (つばめさる)
春先にやってきたツバメが帰り始める頃となりました。子育てを終えたツバメは、季節の移り変わりとともに暖かい南の地域へと旅立っていきます。
陰暦8月のことを「つばめ去り月」ともいいます、ツバメは昔から季節の移ろいを知らせてくれる鳥として人々に親しまれてきました。
投稿者 #泰成明